第十回 センサーの活用例
電子工作創作表現(2019/6/29)
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前期課題の参考
- コンセプト解説
- センサーの活用例
前期課題の参考になるような作例を、ハードウェアの使い方から紐解いていきます。
課題
- 1つの入力と、1つの出力を使う作品プラン
課題内容は前回もお伝えした通り「1つの入力と1つの出力を使った作品プランの提出」です。
センサーなど1つの入力装置と、1つの出力装置を使って何ができるかということを考えてみてください。
同じセンサーや同じモニタ・スピーカーでも、使い方の工夫で色々な表現ができると思います。凝った情報を取るというよりは、簡単なセンサーでより面白い表現ができないかということを是非考えてみてください。
入力と出力の関係性について
- 文脈を無視して何でもつなげてしまう
- 「起きること」から少しずれた「起こりそうで起こらないこと」
このような制限を設けたのは、インプットとアウトプットの関係性について考えてみて欲しいという意図があります。
センサーという形を通すと、あらゆる入力を好きな出力と紐づけられてしまいます。これは非常に面白い事でもあるのですが、一方で文脈を無視して接続できてしまうので、この関係性にどんな意味合いを感じ取る事ができるのかをよく考えてみてください。
「XXセンサー」の名前に限らない使い方
- 商品名等にある「XXセンサー」はあくまで一例
- 設置の仕方で多様な情報が取れる
今日は入力側、センサーについてどんなものがあって、どんな使い方ができるのかかいつまんで紹介していこうと思います。部品の紹介などを見ると「XXセンサー」という言い方がされているのですが、あくまで一般的な名称であって、使い方次第で色々な情報を拾ってくることが可能です。
その辺も色々想像を膨らませながら考えてみてください。
センサーの具体例
ボタン・スイッチ
- モーメンタリ/オルタネイトなど種類がある
- 例:ボタンを押した、物が当たった
ボタンやスイッチもセンサの一種と捉えられます。ボタンには押している間だけONになるモーメンタリタイプと、押すたびにONとOFFが切り替わるオルタネイトタイプがあります。
また「マイクロスイッチ」などは指で押すものではなく物が当たった時に反応することで、モーターの原点出しなどに使われます。そのような使い方をすれば、人だけでなく、物が当たった時を検知することも可能です。
ボリューム・スライド抵抗
- いわゆる「ツマミ」と呼ばれるもの
- どうコントロールするかも工夫しやすい
ボリュームやスライド抵抗はシンプルに値を変化させるのに便利なツールです。そのまま使っても楽しい部品ですが、例えば紐をつけて引っ張ってみるなど、インターフェースを変えてみてもそれだけで意味合いが変わってくるので、試す余地は色々とあると思います。
ピエゾ素子
- 入力としても扱える
- 例:振動が加わった、息を吹きかけた等
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-04118/
音を鳴らすピエゾ素子は、逆に入力装置としても使うことができます。振動を拾ったり、息を吹きかけたりしても値が変わるので、マイク的に使うことができます。小さくて安いので、大量に設置したり狭いところに仕込むなど、普通のマイクではできないような扱い方をするのに適しています。
フォトセンサ
- レーザー等を組み合わせると、遮蔽物を検知できる
- 例:明るさの変化、対象物に遮られた、物が置かれた等
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-02325/
明るさを取得できるフォトセンサですが、部屋の明るさを拾う以外にもLEDやレーザーと組み合わせて色々な応用がききます。レーザーをセンサーに当てて遮蔽センサとして使ったり、黒い線の上を走るライントレースロボットに使われたりなど部品代も安いので色々な使われ方があります。
圧力センサ
- 物を握ったり、押しつぶす力を取得できる
- 例:押し込まれた、物が置かれた、ぶつかった等
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gP-06214/
圧力センサは薄い2枚の導体を押しつぶす事で、接触面積が増えて疑似的に圧力をセンシングできるという仕組みです。ある程度重い物を載せたりしても反応するので、押し込んだ強さの他にも簡易的に重さを測るというような使い方もできるでしょう。
曲げセンサ
- 曲がり具合で抵抗値が変化する
- 例:テンションの張り具合
https://www.switch-science.com/catalog/508/
曲げセンサは細い長い素子の曲がり具合で抵抗値が変わるので、最近ではVRグローブで指の曲げを検知する時なんかに使われます。もう少し張りのある部材と組み合わせて糸の張り具合を計測するというような事もできます。
距離センサ
- 対象物までの距離を測る(1次元)
- 例:近づいた、遠のいた、遮られた
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-02551/
距離センサは1次元で対象までの距離を測ることができます。今ではKinectやRealSenseのように2次元で距離を測れるカメラが出てしまっているのであまり使われなくなってしまいましたが、比較的安価、小型、PCのリソースが不要など距離センサのメリットもまだまだあります。
加速度センサ
- 加速度(acceleration)が取れ、常に重力加速度がかかっている
- 例:傾き具合、振動、落下判定
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-07243/
加速度とは物体に速度を与える要素です。物が動き出す時にはこの加速度が必ず生じていて、センサには常に重力加速度が生じています。加速度センサはこの重力加速度のXYZ方向を計測することで傾きを取ることができます。
また振動する時も細かな加速度を計測することができますし、自由落下する時には一瞬加速度が0になるので、物が落ちているかどうかを計測することも可能です。
ジャイロ(角速度)センサ
- 回転している速度を計測できる。加速度より正確に取れる
- 例:物の回転、弱い振動
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-04912/
静止した物の傾きを取るのは加速度センサが得意ですが、どの方向に回転しているかという情報はこのジャイロセンサの方が正確に計測できます。各速度という形で計測できるので、毎フレームの角速度を回転方向に積算すれば物体の角度を知ることができます。
加速度とジャイロはセットで使われる事が多く、静止した状態で基準となる向きを加速度センサから取得した後、その基準位置からどの方向を向いたかという情報をジャイロセンサによって取得するという使い方が、ゲームコントローラーなどでよく使われます。
加速度とジャイロ・加えて磁気センサがセットになった6軸モジュール:
https://www.switch-science.com/catalog/2845/
その他応用がしにくそうなセンサ
以上が比較的メジャーで扱いやすく、応用が色々期待できるセンサでしたが、もう少しマイナーなセンサについても紹介していきます。
焦電型赤外線センサ
- 赤外線を検知して、人や動物の動きを判定する
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gM-09002/
焦電センサは、人や動物から発せられる赤外線を検知できるセンサです。
可視光の影響を受けないので自動で点灯する照明などはこのセンサが良く使われています。
気温・湿度・気圧センサ
- 大気の状態を計測する。数値の動きは比較的地味
http://akizukidenshi.com/catalog/g/gK-09421/
大気の状態を計測するセンサを使えば気温・湿度・気圧なども取得することができます。台風等が通過すると気圧が大きく変化したりしますが、一日の間であまり大きく数字が変わるわけではなく、これで何かを変化させようとするとかなり地味な動きになってしまうので、あまり展示やパフォーマンスのような作品向きではないかもしれません。
心拍センサ
- 血液に光を当て、反射量で心拍を計測する
- 光センサによる計測はあくまで簡易的な物
https://www.switch-science.com/catalog/3208/
指に光を当てて血液が反射する量を計測することで、簡易的に心拍を取れるセンサというのもあります。
医療用の本気のセンサも勿論ありますが、光センサとArduinoで計測するのはあくまで簡易的な物なので、当て方や外乱でうまく計測できないことも多く、あまり細かな情報を取ろうとすると体験としては難しくなりがちのようです。