第二項 Arduinoとセンサー入力の基本

第二項 Arduinoとセンサー入力の基本

電子工作創作表現(2019/4/25)

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Arduinoに触る

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  • 電子部品を手軽に扱えるようにするツール
     
  • もっとも基本的なのがArduino UNO(左側)
     
  • たくさんの種類がある
今日から実際に電子部品に触っていこうと思いますが、そのために必用なツールArduinoについて紹介します。ワンボードマイコンと呼ばれる電子基板のことで、電子部品でやれる基本的なことは大概これにプログラムを書き込むことですぐ実現できるようになっています。

Arduino UNOと呼ばれるものが一番ベーシックなタイプです。よく似たものにLeonardというものがありますが、最初のうちはUNOを使う事をおすすめします。

込み入った話しをすると、UNOが使うATmega328PではなくATmega32u4というチップを使っていて、これはUSBホストとして振る舞えるのでマウスやキーボードとして動作させたり、UARTというシリアル通信ポートがUSB以外にも付いていたりとちょっとだけ違います。込み入ったことをやり始めるとハマったりすることがあるので、まずはUNOで練習するのが良いでしょう。

他にもたくさんの種類があります。メインストリームのUNOはこの前にいくつもバージョンアップを重ねていて、生産終了したものではDuemilanoveやDiecimilaという物があります。もともとイタリアで産まれたプロジェクトなので、イタリア語がよく使われています。

他のArduino - Arduino nano/micro

Arduino nano

小型のArduino。小さい空間に使ったり、ウェアラブルデバイスにも便利

用途別のラインとして開発されているものもあり、Arduino nanoはUNOを小型化したタイプ、Arduino microはLeonardを小型化したタイプとして位置づけられています。小さなデバイスやウェアラブル用途に向いています。

他のArduino - Arduino mega

Arudino mega

大型で入出力が多いArduino MEGA

他にはArduino megaという、電気を入出力するチャンネルがたくさん付いたバージョンもあります。作品によってはArduino UNO/Leonardで実現しにくい事もあるので、こういったシーンに応じて使い分けができるというのも頭の片隅に置いておくと良いと思います。

Arduino IDE の基本画面

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ArduinoIDEを起動すると、このような画面が出てきます。IDEとは統合開発環境(Integrated Development Environment)のことで、ようはこのソフトの事を指します。ソフトを指して「Arduino」と言ったりすることもありますし、それで通じる事もありますが、ここでは基本的に本体をArduino、PC上で動くソフトの事をArduino IDEと表記します。

Arduinoはここにスケッチと呼ばれるプログラムを書いていって、最終的にUSB経由で書き込む事で目的の動作を実現します。一度書き込んだプログラムは基本的にはArduinoの中に残ったままになるので、ArduinoIDEを閉じてもArduinoの中でプログラムは動作し続けますし、USBを差し直せばまた最初からプログラムが動作します。

サンプルのプログラムBlink

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試しに、プログラムをArduinoに書き込んでみましょう。メニューのファイル>スケッチ例>01.Basics>Blinkを選択すると、新しいウィンドウが開き、プログラムのサンプルが読み込まれます。このスケッチ例には、色々なプログラムのサンプルが登録されているので、コードが読めるようになると、Arduinoにどんな機能が備わっているか、特定の機能を実現する時にどんなコーディングをすれば良いか、知ることができます。

プログラムを書き込む

プログラムを書き込む

読み込んだコードを実際にArduinoに書き込みます。ツール>シリアルポートを選んで、書き込むデバイスを選択します。シリアルポートというのはPCが外のデバイスとやりとりする出入り口のようなもので、英語だと「港」という意味です。PC本体が陸地だとすると、データがやりとりされる港のようなものなので意味を覚えておくと理解しやすいかもしれません。

シリアルポートの中に(Arduino/Genuino Uno)という表記があれば、それを選択します。表記が出ない場合は、Arduinoを抜くと消えるポートが出てくるので、それがArduinoのポートだということが認識できます。Macの場合ttyとcuから始まる物があるかもしれませんが、どちらを選択しても構いません。

それとその上の「ボード」も確認します。どのタイプのArduinoに書き込むかという事を明記する必要があります。

書き込み&実行

書き込み・実行

設定ができたら、矢印マークの書き込みボタンを押すと書き込みがされます。しばらく下の領域に文字がつらつらと流れた後、日本語だと「ボードへの書き込みが完了しました。」と表示されます。こうなると書き込み成功です。

”Lチカ”

Lチカ

正しく書き込まれていると、基板の上の方にあるLEDが1秒おきに点滅します。これでArduinoにプログラムを書き込む手はずは整ったので、実際に電子部品を扱ってみようと思います。

センサー(入力)とは

現実で起きている出来事を、プログラム上の「数値」に置き換える

まず最初は「センサー」を扱おうと思っています。センサーと言う言葉はわりとどの言語圏の方も馴染みあると思うのですが、電子回路においては、現実に起きていることをプログラムの中の数値に直して扱うという考え方です。

明るさセンサーを読み取る

フォトトランジスタNJL7302L-F5

秋月電子で1個50円

フォトセンサ

実際に明るさセンサーNJL7302L-F5(http://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-08700/)を使って、センシングまでの流れを追ってみます。ちなみに光センサにはフォトトランジスタの他にCdsセルというのもありますが、こちらは硫化カドミウムという有害な物質を含んでいるので最近はあまり使われなくなっているようです。

ブレッドボードに配線

circuit

ブレッドボードにセンサーを差し込み、Arduinoと接続していきます。(TinkerCadの都合上光センサが白いです)ブレッドボードは隣り合って並ぶ穴が電気的に中で繋がっている板になっていて、部品を差し込んでいくだけで回路が作れる便利グッズです。

フォトとランジスタには極性があるので注意してください。赤い線とつなぐのは、少しだけ足が長いコレクタ(=電気を集めるのでCollect)、緑の線とつなぐのは短い方のエミッタ(=電気を放射する、発するのでemit)です。

プログラムを入力

接続が終わったら、このようにコーディングします。A0ピンに送られてくる電気の電圧を計測して、USBから数値を出力するプログラムです。

void setup() {
  Serial.begin(115200);
}

void loop() {
  Serial.println(analogRead(0));
  delay(12);
}

シリアルモニタ

monitor

プログラムの書き込みができたら、ツール>シリアルモニタか、画面右上の虫眼鏡マークをクリックして、シリアルモニタを開きます。シリアルモニタはUSB経由でデータをやりとりするためのもので、Arduinoのプログラムから送信されたデータを表示してくれます。

通信速度を先程コードで書いた数値と同じ115200に設定すると、数値がたくさん流れてきます。この状態でフォトトランジスタに手をかざして、数値が変化すれば成功です!

シリアルプロッタ

値の確認に便利なシリアルプロッタ
 

シリアルモニタと同時には起動できないが、シリアル通信で流れてきたデータをグラフにしてくれる

plotter

そしてもう一つ便利なシリアルプロッタという機能があります。これも一度シリアルモニタを閉じてからツール>シリアルプロッタと押すと出てきて、先程の数字を自動的にグラフで表示してくれます。

数値の変化を直感的に読み取ることができるというのと、センサーの微調整や複数の値を比較する時に重宝します。

アナログの値を図る回路

アナログ入力をする時の基本形

circuit

Arduinoで値が取れたところで、回路に戻りましょう。
ワイヤーで3本の線をつなぎましたが、線が2本ある部品の場合、多くがこのような形で配線をします。一方を電源(プラス)、もう一方を抵抗を介した状態でグラウンド(マイナス)に接続し、部品と抵抗の間から線を伸ばしてそこの電圧を図るという形です。

構造が単純なセンサーの多くがこのような電源・グラウンド・Voutの3線式の形を取っているので、この図を頭の隅に置いておくと今後色々と便利になると思います。

抵抗が変化するタイプのセンサー

  • 光量・温度等センシングする条件によって抵抗値が変わる
     
  • 「分圧回路」を作ってあげてセンサーで読み取る
光センサのように線が2本出ているタイプというのは、前の画像の回路のような分圧回路を作ってあげることで、Arduino等のマイコンで値の変化を読み取ることができるようになります。

フォトトランジスタはトランジスタの構造を持っているので少し特殊ですが、他多くのセンサーは、条件によって抵抗値が変わる仕様になっています。

モジュールになっている3線式のセンサー

  • Vcc・Vo・GNDがあらかじめパッケージされて出ているので、接続が楽
     
  • 電圧ではなくデータを送信する場合もあるので注意(センサー応用編で解説します)
また、この回路があらかじめ組まれている親切なタイプのセンサーも販売されています。
例:
 磁気センサー(http://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-11029/)
 距離センサー(http://akizukidenshi.com/catalog/g/gI-02551/)

このように必要な機能がある程度組み込まれたものを「センサモジュール」とか「パッケージ」とか言ったりするのですが、このパッケージの中に先ほどのような回路が組み込まれているので、Arduinoから利用する時は出ている3本線をつなぐだけでセンサーの値を取ることができます。

ただし、同じ3線式でも電圧の上下ではなくデジタルの信号を送信してくるタイプもあるので、自分でセンサーを買って試してみる時にはデータシートをよく読んで確認してください。そのようなタイプのセンサーの使い方は、また後の講義で解説します。

データシート

  • 部品の使い方など細かい情報は「データシート」を読むと分かる
データシートという言葉が出てきましたが、これは部品に関する情報がまとまった、いわゆる「取扱説明書」のようなものです。例えば先ほどの光センサは、秋月電子通商のWebサイトで確認することができます。(http://akizukidenshi.com/download/ds/jrc/NJL7302L-F5.pdf)

「XXセンサ Arduno 使い方」などで検索すると、たいていの物は丁寧な解説ページが出てきたりもするんですが、そういう方たちはじゃあどこで情報を得ているかというと、部品メーカーが制作しているこのデータシートが基準になります。

白黒で専門用語だらけですし、モノによっては全て英語だったりするのですが、このデータシートをしっかり読めるようになると自分の目的に合った部品を選定できるようになるので、色々なパーツを試してみたい人は頑張って読めるようにしておくと良いと思います。

電子部品屋さんについて

  • 電子部品と言えば秋葉原だが、最近は通販も充実
     
  • アマゾンにも色々売っているが、データシートのような情報は部品屋さんが充実
自分でも部品を色々買いたいとなったら、電子部品屋さんで購入するのがおすすめです。秋葉原はすっかりアニメカルチャーの街になってしまいましたが、それでも昔ながらの電子部品屋さんがたくさん残っています。

秋月電子のようにメジャーな電子部品屋さんだとだと、実店舗と通販を両方やっています。こういう所で買っておくと、普段は通販を使いつつ急に必要だったりした時に買いに走れるというメリットもあります。

アマゾンも最近は色々な部品が売られたりしているのですが、製品の情報が薄かったり怪しかったりするので、単純な部品以外は少し注意して購入するのが良いでしょう。

店舗情報

秋月電子通商

千石電商

マルツパーツ

スイッチサイエンス

第一項 電気と安全

第一項 電気と安全

電子工作創作表現(2019/04/19)

第一項では、実際に電子部品に触る前に
電気と安全についての基本的な概念を確認していきます。

電気の基礎知識

「電気の正確な知識」ではなく「便利な概念」を習得する

まず電気について。小中校と理科や物理で、さらに生活の中でなんとなく概念は分かってると思いますが、ここではもう少しだけ掘り下げて「物理的に正しい電気の正確な知識」ではなく「電気を道具として扱う上で便利な概念や考え方」という視点で、少し噛み砕いた言い方でポイントを抑えながら電気というものについて説明して行こうと思います。

電気とは?

電気力・電気伝導など、種々の電気現象のもととなるもの。多く、電荷・電流または電気エネルギーをいう。(大辞林 第三版)

→電気というものがあるわけではなく、"電子"が流れている現象周辺の事を指す

電気とは何ぞやと辞書を引いてみると、このように書いてあります。何でこんな書き方かというと、電気という物体そのものは存在していないわけで、実際は電子と呼ばれる素粒子の一種が流れる事によって起きる現象やその状態の事を広く「電気」と呼んでいるわけです。

しかし電子工作で電気を使う立場としては、あまりここの正確さは重要ではないので、軽く触れるだけにしておきます。

電気の使い方

力としての電気と、情報としての電気がある

電気を「使い方」という視点で見た時に、力としての電気と、情報としての電気というふうに大きく2つに分けることができます。

力としての電気

電気のエネルギーを他の有用なエネルギーに変換する

→光らせる・温める・動かすetc...

→規模が大きくなると、強い電気が必要

力としての電気というのは、電気エネルギーを変換して光らせたり、温めたり、動かしたり何か他のエネルギーにするという使い方です。
例:電灯・ヒーターの電熱線・モーター

情報としての電気

流す電気のパターンに意味をもたせるもの

→基本的には弱い電気を流す

情報としての電気というのは、電子部品同士や機械同士の間で、情報をやりとりするための電気です。電気信号とも言います。
身近な例ではオーディオケーブルや映像ケーブルに流れる電気がそれにあたります。
ここで使われる電気は、基本的に弱い電気を使っている事が多いです。

電気の強さ

電気の強さ電力(Watt)=電圧(Volt) X 電流(Ampere)

強い電気、弱い電気という言葉が出てきましたが、電気の強さは電力とも言い、数字で表されます。
単位はワットで、電圧と電流をかけたものが電力になります。
この電圧・電流というのはこれからよく使うものなので、言葉と違いをよく覚えておいてください。

電圧

電気を流そうとする強さ。単位はボルト

3.3/5/9/12/24Vなど、良く使われる電源電圧は決まっている

電圧というのは電気を流そうとする強さのことで、何か回路を作る時には、何ボルトの電圧を流すか決める必要があります。大体よく使われる電圧はいくつかの数字に決まっていて、USB機器に流れている電圧は5Vで動くのでArduinoも5Vで動作する設計になっています。

電流

回路に流れる電子の量。

→ざっくりと言うと「回路が消費する電気の量」

電流は、回路に流れる電子の量を表します。これだけだとナンノコッチャですが、電子回路を作るシーンにおいては、まず電圧の方が決まっているので、この電流というのが「その回路が消費する電気の量」と思っておくと大まかな感覚としては間違いないです。

例えば日本の家庭用電源は契約によって20Aとか30Aとかだったりしますが、電圧は全国で100V統一です。つまり20Aなら20Ax100V=2000Wまで使えるということになるので、同時に使う家電の総量がここに収まるよう計算すれば、ブレーカーによる停電を防ぐことができます。日常使う家電なんかは数十ワットで収まりますが、電子レンジなんかは1台で1000w使ったりするので、レンジでブレーカーが落ちる理由がよく分かると思います。

まとめ

  • 電気の使い方には「力として」と「情報として」の使い方がある
  • 電力(電気の強さW) = 電圧(電気を流す力V) x 電流(消費する電気A)

安全の基礎知識

続いては安全についてです。電子工作も、理工学系ではなくこういった芸術系の大学で教えるくらい間口が広く扱いやすい存在になったわけですが、その分安全面には一層注意を払わなくてはなと考えています。

作品制作と発表における危険

  • 作る時の危険
  • 見せる時の危険
作る時の危険と、見せる時の危険についてそれぞれ気をつける必要があります。

作る時の危険

  • 道具を正しく使う(1メートルは一命取る)
  • 電子工作で起こる危険は後述
作る時に気をつける事の基本は「正しく道具を使う」と同義です。
特に慣れている道具ほど気をつけなくてはいけません。「1メートルは一命取る」という安全標語があるように、大丈夫そうに見えてしまう状況が一番危険です。

見せる時の危険

  • 日々使う電化製品は、ものすごく厳しい安全基準をクリアしている
  • 自分が大丈夫でも、年齢・性別・文化などで安全性は変わる
私達が日常使っている電気製品には数多くの安全基準が課されています。普段何の苦労もなく使えているので、つい自分で作るデバイスを他の人が使ったり体験するようなシーンについては、そういった危険性を見落としがちです。

また、自分が体験して安全だったとしても、他の人にとっては危険ということもあります。強くて早い光の点滅がだめな人(子供は特にNG)や、暗い空間で心臓の鼓動のような音を聞くのが苦手な人もいます。

最近では2眼式のVRゴーグルを7~10歳以下の子供に体験させると眼球や視野の発達に影響を及ぼすのではないかという事が議論されています。(Oculusは13歳、Nintendo labo VRは7歳からなど)目新しいデバイスや、まだ多くの人が体験していないような装置にはそういった未知の危険性が潜んでいることもありますので、しっかりとリサーチをするなどより注意が必要です。

電子工作で起こりうる危険

  • 発熱
  • 発火
  • 感電
ここまで一般的な展示やパフォーマンスにおける安全性についてでしたが、電子工作で起こりうる危険について少し掘り下げてみようと思います。

発熱

  • 全ての部品は発熱する
  • 熱が溜まると、部品の溶融や発火につながる
  • ヒートシンクや空冷で「冷やす」
まず発熱ですが、ほんのり温かくなる程度や、触っただけでは分からないレベルも含めると基本的にほぼ全ての電子部品は大なり小なり発熱をしています。
導体には流れてくる電流を抑える抵抗という性質があるのですが、この抵抗によって熱が生じます。(摩擦熱のようなイメージ)

発生した熱は空気に触れたりすることで放熱されますが、放熱より発熱する量の方が多い時、温度が上がり続けて素子が壊れたり、周りのものを溶かしたり焦がしたり、最悪の場合燃やしてしまいます。

追々詳しく説明しますが、基本はファンやヒートシンクで「冷やす」ということと、そもそも発熱するのがおかしい場合は回路や使っている部品を検証し直すなどの対策が必要になります。

発火

  • 発熱及び放電+可燃性物質
  • 燃えやすい物は、とにかく離す
続いて発火です。これは発熱で可燃性の高い物質が熱せられる事で火が出る、というのが一番わかりやすいパターンです。電気が流れているもののそばに燃えやすい物をとにかく置かないというのが大原則です。

東京デザインウィークで投光器から出火して5歳の男の子が亡くなるという痛ましい事故がありました。あれも照明自体は通常使用で出る発熱量ですが、そこに燃えやすいおがくず状の木材が密着されていた事が原因の一つです。また、可燃性のあるガスうや液体については熱が出ていなくとも静電気やショートによる放電で発火することもありますうので、熱源が確認できていなくとも、電気回路のそばにはとにかく可燃性物質を置かない、やむをえない場合は相応の安全策を取り、舞台や展示会場の責任者に通達するなど対策を徹底するようにしてください。

感電

  • 電流量によって感じ方が変わる
  • 電源を入れたまま回路を付け替えたりしない
  • ケーブルやケースなどは必ず「絶縁」する
  • 作業によっては「電気工事士」の資格が必要なこともあるので注意
最後は感電です。これは可能性としては低い部類ですが、注意するに越したことはありません。要するに人体に電気が流れ込むことで神経が刺激されるわけですが、人間の筋肉も微弱な電気信号によって動いているので、強い電流が流れた場合心停止などもおきます。

プラスとマイナスに同時に触れれば回路が出来上がるので当然電気が流れますが、プラスだけを触っていても、地面や金属などに触れて電気の逃げ道があった場合は電気が流れる可能性は十分あります。

対策としては、回路をつないだり外したりする時は必ず電源を切るようにしてください。思うように動かなくて焦っている時などついやってしまいがちですが、危険です。

この講義では扱う予定は無いですが、100V電源など配線する時は特に気をつけてください。場合によっては「電気工事士」の資格が必要な事があります。

まとめ

  • 作る時の危険と見せる時の危険、それぞれ検証を重ねて準備を進める
  • 電子工作では特に「発熱・発火・感電」に気をつける。

安全についてさらに詳しく

舞台技術の共通基礎

山岡潤一さん - 安全な作品を作るには:体験型作品展示の安全管理チェックリスト

入門テキスト 安全学

なぜ13歳未満の子供は、Oculus Riftを使用してはいけないのか?医学的な見地からの警鐘

第〇項 オリエンテーション

電子工作創作表現

  • 講師について
     
  • 内容について
今年度から非常勤講師として講義を持つことになりました、よろしくお願いいたします。
第一回はまだ皆さん履修登録も完了していない段階だと思いますので、簡単に自己紹介と電子工作創作表現という講義の内容について話していけたらと思っています。

講師について

加治 洋紀
 

2015年 多摩美術大学大学院情報デザイン研究領域修了。同年よりERATO川原万有情報網プロジェクト 特任研究員。

URL: http://sheep-me.me

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作家として

「日辻」の名義で作家活動中。
電子部品をいけばなに見立てた「活線プロジェクト」などを制作

URL: https://instagram.com/kassen_project

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社会人(?)として

主に広告などクリエイティブに関わる開発業務で食べています。プログラムも書くし、電子工作や機械工作も

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広告や企業展示など、クリエイティブに関連した開発業務で生計を立てています。オリエンテーションで時間が余ったら、最近やっている電子工作関連の事例についても紹介しようと思います。

電子工作創作表現で学ぶこと

  • 着地点について
     
  • 具体的な技術など
では、内容についてです。大きくこの講義で学ぶことの着地点についてと、具体的にどういった技術について解説するかという点を今日は話せたらと思っています。

電子工作創作表現の着地点

  • 自分の目的に必要な技術をリサーチできるようになる
  • 実装力を身に着け、作品制作や研究につなげる
今回の講義では、着地点を大きく2つ考えています。
一つは電子工作におけるリサーチ力、もう一つはそれらを自分の手元で実現する実装力です。

必要な技術をリサーチできるようになる

  • 電子デバイスを包括的に学ぼうとすると、それだけで大変
     
  • 電子工作における学習について学習する
電子デバイスと一口に言っても、非常に多くの規格やノウハウが存在しています。
照明、オーディオ、モーターに関する回路、それぞれの専門家やそれだけを作っている会社があるくらい奥の深い世界なので、私もまだまだ知らないことだらけですし、ましてや週一の講義で紹介しようとすると限界があります。

なので、本講義では基礎的な要素を教えながら、応用的な目的を実現する方法について、ヒントとなる資料や調べ方についてもレクチャーしていきたいと思っています。

作品や研究につながる実装力をつける

手を動かす!

そしてもう一つはそれら自分で調べた情報を元に、実際に動作する回路として実装していく力をつけていくことを目標とします。
とにかく手を動かすということです。ソフトウェアと違って環境が整わないとなかなか手をつけづらい分野だと思うので、なるべく手を動かせるような時間も取れる内容にしていきたいと考えています。

具体的な内容について

具体的な内容について、シラバスに沿って少し触れていきます。

Arduinoを使った電子工作の基礎

  • 電気・電子機器を扱う上での安全について
  • アクチュエータ・センサーの基礎
  • Arduinoの開発基礎
まず最初に電気に関する基礎知識や安全について解説していった後、光や振動センサのような、簡単に扱えるセンサーやアクチュエータの仕組み、使い方について実践を交えながらレクチャーしていきます。
そしてセンサーについて説明する段階で出てきますが、Arduinoというデバイスがあるので、それについても時間を取って解説していこうと思っています。

Arduinoについて

アート関連で最もよく使われているマイコンボード
 

USBでパソコンにつないでプログラミングをするだけで、簡単にハードウェアが制作できる

公式URL(英語)https://arduino.cc/

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Arduinoは基本的な電子工作をする際に便利なツールで、大体3000円くらいで本体が買えます。
講義用に学校にもいくつか購入してもらおうと今進めていますが、自分でも色々試してみたい人は買ってみると良いでしょう。
アマゾンで500円くらいの安い互換品が有ったりしますが、初学者には分かりづらい仕様の違いがあったりするので、もし買うとしたら一台は純正のものを持っておくことをお勧めします。詳しい理由は追々講義でも説明しようと思っています。

モジュール等を使った電子工作

  • モジュール基板との通信を使ったセンシング
  • トランジスタやモータードライバを使ったアクチュエーション
基礎的なところをさらった後に、もう少し込み入ったセンサーやモジュールを扱っていきます。
傾き検知や気温・気圧のようなセンサーはモジュールという形で売られている事が多いので、そういったモジュールの使い方についてレクチャーしていきます。
アクチュエータについては、これも追々やっていきますがArduinoで扱える電気の大きさには限界があるので、大きな照明やモーターを動かす力がありません。卓上の電子工作から、もう少し展示スケール・舞台スケールで大きな装置を扱いたい時のスケールアップの仕方について解説していきます。ここまでで前期くらいのイメージです。

ハードウェアによる音響制作

  • マイコンによる音響合成
  • Mozziを使ったオーディオ制御
  • アクチュエータを使った発音
後期はもう少し特定の目的に沿ったレクチャーをしていこうと思っています。
音楽部なので音を重点的にやろうと思っていますが、電子工作で音を出すやり方にも色々あります。シンセサイザーやサンプラーのようなものを自分で作るというのもありますし、動く物で物理的に音を鳴らすというようなアプローチもあると思うので、この辺りもいくつか紹介しながら実践できればと考えてます。

TouchDesignerとの連携

  • DMXやシリアル通信について
  • 照明演出
  • 機械装置演出
そしてこの講義の1コマ前にある比嘉さんの「映像音響処理概説」でTouchDesignerというソフトを使った講義があると思いますが、両方取る人が結構いるかなと思うので自分で作ったデバイスをTouchDesignerで連携する、ということもある程度時間を割ければと思っています。

講義を受けるにあたって必要な要件

  • ある程度の手作業ができること
  • 基本的なコンピュータの操作ができること
なので、講義を受けるにあたりある程度の手作業ができること、基本的なパソコンの操作ができることを前提とします。
電子回路の組み立ては多少細かな作業がありますが、よほどの不器用でない限りは大丈夫なので安心してください。ものすごい小さなプロダクト等を作ろうとしない限り手先の器用さはそこまで求められません。
PCについても、そこまで込み入ったことはしませんが、Arduinoに書き込むためのプログラミングは少しやることになります。

成績・評価

  • 出席
     
  • 簡単な課題
評価についてですが基本出席と、簡単な課題は少なくとも前期の終わりでは出してみたいなと思っています。ただ電子工作は手間をかけるとかけるだけお金がかかってくるので、じっくり考えて、少ない手数でクリティカルな物を作るようなものを考えています。

講義資料について

http://sheep-me.me/
 
「講義資料」のページを作りました。

そして講義資料ですが、スライド資料がテキストベースになっているものを逐次アップロードしておくので、復習に活用してください。サンプルソースコードのような配布資料があった場合も、こちらのページを本講義におけるポータルということにしておきます。