Date : 2015/09/08
Description :
本作は、作品主体としてのシステムを提示するために、既存の動力システムであるパラレルリンクメカニズムをモチーフにした”システムの素描”として制作した。パラレルリンクメカニズムとは、一つのワークに対して複数のアクチュエータが並列に繋がった機構を言う。本作の中でモチーフに選んだAgile eyesと呼ばれる機構には3つのアクチュエータが並列に繋がっているため、それぞれ他2つのモーターの可動域を制限しつつ、自らも可動域が制限され、システムとして象徴的な相互作用を起こしながらワークの角度を決定する。決定されたワークの先には紫外線のレーザーポインターが取り付けられており、動いたモーターの角度で次に指示する座標が決定されるというフィードバック構造によるドローイングを行っている。
”システムのための表層”としての造作であることを強調するため、極力作者の手作業による加工を排除した。木材加工等を行わず3Dプリントや発注したアルミフレームを組み立てることで作品を構成している。レーザーポインターの指示する先には蓄光塗料を塗布したアクリル板があり、ポインターの軌跡を短い期間記録している。
このシステムでは、決定された点を指示するために、各モーターが到達するべき角度のみが設定される。点から点へ移る軌跡はプログラム上では定義されておらず、そのため点から点へと移る軌跡はシステム上で定義されない歪んだ線を描く。シミュレーター上で描かれる軌跡は、デカルト座標系における点と点の補間であるが、装置においては3つのアクチュエーターの回転運動による補間となるため、システムから定義されない領域における独自の揺らぎを発生させている。