電子部品をいけばなに見立て、実装しています。
2019年 SICF20 EXHIBITION 菅野薫賞 受賞作品
Instagram page
この作品が動作する原理について詳しく説明できる者はそう多くない。作者でさえも全てを正確に説明しきることは難しいが、私達はそれよりも遥かに複雑なテクノロジーに囲まれて生活している。
Date : 2016/01/20
Description :
本作は、2台のパラレルリンクメカニズムによって機構同士を結ぶゴム紐を引っ張り合うシステムを制作した。ゴム紐に対して加わる張力を計測しており、張力に応じて機構の振る舞いと発生する音響のパラメータを決定する。マシンとマシンが紐によって接続され、相手の振る舞いによって自己の振る舞いを変化させることで、システム論におけるキーワードの一つでもある相互作用性を強く想起させるようなイメージを目指している。タイトルの"Tension"には、マシンを接続するゴム紐自体が持つ張力と、均衡が保たれたシステムの中に立ち現れる緊張感のようなものという二つの意味を込めた。
作品の支持体にはアルミフレームを使用し、300mmx300mmx2000mmのサイズで制作。装置が上下で向かい合ってゴム紐を引っ張り合う。スピーカーは指向性を作らないよう3方向に発声する筐体を制作し、アルミフレーム内部に設置した。
上下のアームは自分にかかる張力を一定範囲に保つよう調整を行う。アームが動き出すタイミングは内部で同期を取っており同時に動き出すが、次に相手の装置がどのような振る舞いを見せるかは把握していない。相手の現在の位置を元に張力を調整しようとするが、その次のタイミングでは互いに動き合うのですれ違いのような振る舞いを見せる。互いの振る舞いを把握した場合では一定の張力にすぐ収束してしまうが、未定義の情報を作り出し、すれ違いを起こさせることで動的な関係性が生まれる。
Date : 2015/09/08
Description :
本作は、作品主体としてのシステムを提示するために、既存の動力システムであるパラレルリンクメカニズムをモチーフにした”システムの素描”として制作した。パラレルリンクメカニズムとは、一つのワークに対して複数のアクチュエータが並列に繋がった機構を言う。本作の中でモチーフに選んだAgile eyesと呼ばれる機構には3つのアクチュエータが並列に繋がっているため、それぞれ他2つのモーターの可動域を制限しつつ、自らも可動域が制限され、システムとして象徴的な相互作用を起こしながらワークの角度を決定する。決定されたワークの先には紫外線のレーザーポインターが取り付けられており、動いたモーターの角度で次に指示する座標が決定されるというフィードバック構造によるドローイングを行っている。
”システムのための表層”としての造作であることを強調するため、極力作者の手作業による加工を排除した。木材加工等を行わず3Dプリントや発注したアルミフレームを組み立てることで作品を構成している。レーザーポインターの指示する先には蓄光塗料を塗布したアクリル板があり、ポインターの軌跡を短い期間記録している。
このシステムでは、決定された点を指示するために、各モーターが到達するべき角度のみが設定される。点から点へ移る軌跡はプログラム上では定義されておらず、そのため点から点へと移る軌跡はシステム上で定義されない歪んだ線を描く。シミュレーター上で描かれる軌跡は、デカルト座標系における点と点の補間であるが、装置においては3つのアクチュエーターの回転運動による補間となるため、システムから定義されない領域における独自の揺らぎを発生させている。